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最高裁判所第一小法廷 昭和46年(オ)773号 判決 1972年7月06日

上告人 中川幸治(仮名) 外一〇名

相続財産管理人 官崎安夫(仮名)

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人中村俊輔、同中村宏の上告理由について。

遺産分割の申立があつた場合に家庭裁判所が家事審判規則一〇六条一項により選任する相続財産管理人については、民法九一八条のように同法二八条を準用する旨の明文の規定はないが、これが設けられた趣旨に鑑みれば、同条を類推適用して、右相続財産管理人は、家庭裁判所の許可なくして同法一〇三条所定の範囲内の行為をすることができ、相続人に対し相続財産に関し提起された訴については、相続人の法定代理人の資格において、保存行為として、家庭裁判所の許可なくして応訴することができるものと解すべきである。したがつて、被相続人亡中川真喜男の遺産の分割の申立に伴い大阪家庭裁判所において家事審判規則一〇六条一項により相続財産管理人に選任された宮崎安夫が、被上告人から真喜男の相続人である上告人らに対し遺産に属する建物を収去してその敷地を明け渡すべきことを求めるため提起された本件訴訟について、上告人らの法定代理人として応訴することを許容した原審の措置は正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩田誠 裁判官 大隅健一郎 藤林益三 下田武三 岸盛一)

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